ガガガっ、ピ――――
という不快なノイズ音が突如講堂に溢れる。
それにシンやステラ、そして雑談をしていた者たちも皆驚き壇上を振り仰いだ。
すると、いつの間にか壇上には数人の生徒たちが並んでいた。
そのうちの一人、綺麗に切り揃えられた銀髪が印象深い男子生徒――ネクタイが紺色なので三年生らしい―――が無駄のない動きで前に進み出る。
マイクを手にしたその男子生徒は一つ咳払いをすると、硬い声音を発した。
「新一年生の諸君、入学おめでとう。我々は種定高校生徒会だ」
男子生徒はそこで一拍置き、続けて
「俺は議長の三年生イザーク・ジュール」
とまず自己紹介をした。
次にずらりと並ぶ生徒会役員を一人一人指差し出す。
一番左端の金髪色黒の男子生徒を指し
「副議長の三年生ディアッカ・エルスマン」
次にその隣の肩口で跳ねた明るめの茶の髪が可愛らしい女子生徒を指差し
「会計の三年生ミリアリア・ハウ」
次にその隣の真っ直ぐな長い髪の女子生徒を指差し
「書記の二年生シホ・ハネンフース」
次にその隣の藍色の髪の男子生徒を指差し
「副会長の三年生アスラン・ザラ」
そして最後にその隣の金の髪の女子生徒を指差し
「生徒会長の三年生カガリ・ユラ・アスハ」
全員言い終わったところで議長イザーク・ジュールは正面に向き直り、
「以上七名、プラス雑用二名の生徒会だ」
雑用二名、という言葉にシンはうん?と首を傾げるが、議長が話を続け出したので今は置いておくことにした。
イザークは背後の生徒会長カガリに目配せしながら、
「ではここで生徒会長に当校について簡単な説明をしてもらう」
と言い、前に出てきたカガリにマイクを手渡した。
カガリはマイクを受け取ると、あ、あ、あーとマイクテストを行う。
マイクの調子に満足いったようで、カガリはにっこり笑って前を向いた。
「皆、入学おめでとう。さっきイザークに紹介してもらった生徒会長のカガリ・ユラ・アスハだ」
はきはきと話すカガリを見ながら、シンはふーんと頷く。
「なんか、勝気そうな女生徒会長だなー」
「カガリ先輩は勝気そう、じゃなくて勝気よ」
ぼやいたシンの言葉を拾い、ルナマリアが身を乗り出してきた。
シンは目を瞬かせる。
「なんだ、ルナ。あの生徒会長知ってるのか?」
「知ってるわよ。だってあの人寮生だし」
「あ、そうなんだ」
寮生か、そうかそうか。
だったらルナがあの生徒会長と知り合いでもおかしくないな。
とシンは納得した。
そんなシンにルナマリアは怪訝そうに眉を寄せる。
「というか、現生徒会役員は全員寮生だって聞いてるけど。男子の方で見かけてないわけ」
「………え?」
あの人たち、うちの寮にいたのか?
シンは腕を組んで眉間にしわを寄せた。
入寮してからの記憶をたぐりよせる。
しばらくそうして黙り込み。
「…………あ」
とシンは声を上げた。
自分の脳世界へと入り込んでいたシンを放ってカガリの話を聞いていたルナマリアが顔をシンに向け直す。
「なに、思い出したの?」
「うん……なんか、寮にいたって言われたらそんな気するんだ」
銀髪の議長も、金髪の副議長も、藍色の髪の副会長も何度か視界の端に写ったことくらいはある。
「と思うんだけどな」
「…………あんた、よくあの美形集団が一つ屋根の下にいたって言うのに気にも留めずいられたわね」
ルナマリアは心底呆れたように嘆息した。
あの、一人一人でも異様な空気というか威圧感のようなものを醸し出す人たちが記憶に薄いなんて。
「そんなに他人に興味を持つ方じゃないってのは知ってたけど、ここまでとはびっくりだわ」
「………悪かったな」
「えぇ、悪いわよ」
「…………」
馬鹿にされたような気がして―――多分気のせいではない―――シンは軽く唇を尖らせた。
そんなシンを横目で見遣りながら、ルナマリアは心中で
ほんっとガキ。
と呆れながら毒づく。
その一瞬後に、シンがぎろりとルナマリアを睨んだ。
「………なんか言ったか?」
「べっつにー」
ふいっとそっぽを向くように前に向き直ったルナマリアへ渋面をつくり、シンも壇上に視線を戻した。
しかし、会長による学校説明は、いつの間にやら終わりを迎えてしまっていた。
カガリは文面に書かれているらしい学校規定や学校施設の説明を読みあがったようで、紙から目を離し前を向く。
「とまぁ、こんな感じの規定や施設の学校だ。少し堅いところもあるが、この中で高校生活を楽しんでほしい」
そこでカガリはそれでは、と置いてにぃっと明るく笑った。
「これにてオリエンテーション終了!新一年生の皆、ようこそ種定高校へ!」
続いてパンっと大きく手を鳴らしたかと思うと、次の瞬間にはもっと大きな何かの弾ける音が講堂に響いた。
そして上からひらひらと何かが舞い降りてきた。
それをひとつ掴み取り、シンは目を瞬かせる。
「え、これ………紙ふぶき………?」
色とりどりの紙の雪。
それらが空から、ではなく天井から、というよりも天井に設置されたくす玉から降ってくる。
「あんなのあったんだ…………」
気付かなかった………ってかどうやって割ったんだろ?
怪訝そうに首を傾げるシンに対し、隣のステラはわぁと瞳を輝かせている。
「きれー………雪みたい………」
手を伸ばし、紙の雪を受けるステラはシンに向き
「ね、きれーね、シン」
にこぉと、真綿のような笑みを見せられ、シンは先程まで疑問に思っていたことを全部吹き飛ばす。
うんっうんっと頷き
「綺麗だな、ステラ!」
こんな風に、シンたち新一年生らは、種定高校の一員となった。
END
‐あとがき‐
やっと書けたよ入学式………(屍)
えーと、実はこれの四分の三くらいまでは1月にできていたんですョ。(今3月末ですョ)
なんか、上手く話が繋げなくて………いや、だからと言ってこれで上手く繋げているとは思ってはおりませんが、でもでも……(ごにょごにょ)
アンケートで、現パラの続きを希望している人が多いと知りまして………ありがたいことです!!
なのでなので。
なんとか入学式を仕上げました!!
お気づきの方もいらっしゃりますでしょうが、一応申しておきます。
04より、ステラの一人称を「ステラ」に変えました。本編でステラが自分を「ステラ」と呼ぶということがわかりましたので。
ま、ささいなことですが(そうか?)そういうわけでこれからステラは「ステラ」ですので。
では。
こんな話じゃ満足頂けないかもしれませんが、これからもっと他キャラでる予定なんで、よかったら付き合ってつかぁーさい!(誰)
UP:05.03.26